インキュベーションを行っているネオテニーではビジネスデベロップメントのお手伝いをする傍ら、人事、PRなどのお仕事もさせていただきました。当時のネオテニーはまるで動物園のようで、ひとりひとりがそれぞれの個性を存分に発揮していましたね。すごくいい経験を、自分で自覚することなくさせていただいたと思っています。
コーチングを知ったきっかけは、2002年の6月。慶応ビジネススクールの後輩が教えてくれました。CTI(Coaches Training Institute)のワークショップが私にぴったりだと。参加してこれだ!と思いました。
コンサルタントとコーチングの違いについて問題解決という切り口から説明します。
当時、わたしは戦略やIT、人事系のコンサルタントの方と一緒に仕事をしていました。コンサルタントに必須なロジカルシンキングといったアプローチはたいへん効果的です。問題がどこにあるか、どのように解決していくかをについて、シンプルかつ合理的に説明していきます。私が出会ったCTIのコーアクティブ・コーチングでは、あくまでも答えはその人の中にある、その人が答えを持っているというところからスタートします。だからコーチは聞くことによってその人が既に持っている答えを引き出し、行動と学習を促し、"結果として"問題解決につなげていくんです。パラダイムの転換でした。答えを提供するコンサルティングから答えを引き出すコーチングっていいなと思ったんです。
ロジカルなコンサルティングに限界を感じていたのも確かです。客観的な正論をクライアントに提示し、クライアントも頭では「その通り」と納得しても、体が動かない場合がある。でもその人が動かないと物事は進まない。そして、せっかくのコンサルティングが活かされない。そんなケースをいくつか見ていました。コーチングは、クライアントさんその人が見ているものを横から一緒に見ていく。そして、クライアントさんの考え方の癖や、枠組みについて徐々に明らかにしていく協働的なパートナー関係です。
とても暖かく、ワクワクする関係。コーチングを通じてクライアントさんとコーチである自分の大きさも感じることができます。まさに、人間のでっかさを感じるんです。本当に自分にとってライフワークだと思っています。
コーチングに魅力を感じて、CTIのプログラムを受講し、コーチとしての仕事も請けはじめました。
2004年の9月には、コーアクティブ・コーチングの認定資格のプログラムを受講し、CPCC(Certified Professional Co-Active Coach)という日本ではまだ50人程度しか取得者のいない資格試験に合格しました。現在、企業との契約とは別に個人のクライアントさんが15名、いらっしゃいます。電話でのコーチングが主体です。10日に1回、40分というのが一般的なサイクルです。クライアントさんはさまざまで、大学生や事業家、50代ぐらいの方まで、男女問わずいらっしゃいます。主婦の方もいらっしゃいますよ。コーチングに興味を持っている方が多いですね。口コミでクライアントになっていただくことがほとんどです。クライアントになっていただくのに条件を2つ出させていただいています。1.自分自身に興味を持っていること。そして 2.本当に変わりたいと思っていること。この2つがそろっていてコーチングに臨んでいただければ、コーチングはとてもあてになるパワフルなものになると思います。
私自身もコーチングを受けていて思うのですが、自分の可能性を自分以上に信じてくれる、自分の存在の正しさを揺ぎ無く信じてくれる、コーチってそんな存在なんです。だからとても勇気が出る。家族や恋人だと近すぎて言えなかったりすることがないですか?利害関係が直接的で、言えないこともありますよね。コーチは聞くことのプロです。どんなことを言ったとしても、そこにある思いや本当の気持ちに光を当て、行動と学習を促し、変化を起こすサポートをする存在です。だからこそクライアントさんは心のそこに溜め込んでいることが本当に言えるんです。今の自分のありようを全て出せる。そしてそこにある自分の思いを確認し、行動につなげる。普段の生活の中で定期的にそんな時間を持つことが、本当に貴重だと言っていただいています。
コーチとしてうれしいのは、クライアントさんが変化を遂げていくのを見られること。短い人で3ヵ月で結果が出てきます。クライアントさん自身が自分で変化を起こし、目標を達成していくプロセスを見るのは自分のこと以上にうれしいですね。
コーチングのプログラム自体はアメリカから入ってきていますが、ヨガやマクロビオティックと同様、東洋的な良いものがアメリカで注目されて体系化され、日本に帰ってきたと理解するのがいいのではないでしょうか。東洋で暗然と受け入れられているものを、アメリカが吸収する過程で、言葉によって具体化された、といった感じです。日本文化の良さだと思うんですが、柔道など、横にいて見て盗めではないけれど、言葉ではなく時間をかけてじんわりと伝えていくという独特の伝え方がありますよね。アメリカではそれは通じないので、あいまいなところをすべて言葉でうめていくんです。そうすると一種の具体的なプリンシプルが生まれる。そして多数の人に伝わる力が備わるんです。もともとコーチングはとても東洋的な「道」に通じるものだと私は思っています。
これからの夢としては、学びの共同体的なものを作って行きたいですね。レクチャー型ではない、ワークショップ型の学びの場、そこで切磋琢磨、成長していけるような場に関わっていたいです。現在、大学院の恩師である高木晴夫先生と一緒に論文を書いています。大人の成長やリーダーシップに関する論文なのですが、そういった研究を実践につなげることもしていきたいと思っています。具体的には2005年の2月から、起業・SOHO系の人を対象に、失敗や悩みを成長に変え、自分に対してリーダーシップを持つということを目的としたワークショップを始めます。そこでは、結果収束型のディスカッションではなく、自分自身が何を考えているのかに気づき、それぞれがそれぞれに成長するようなグループセッションを目指そうと考えています。現在、女性起業塾で講師もさせていただいていますが、講師というよりもパートナーとして関わらせてもらっています。私が関わる仕事、全てにおいてこの学びの共同体を作っていくこと。これを大切にしていきたいと思います。
それからもう一つ、コーチングの未来についてお話をしたいと思います。私はコーチングって掛け算だと思っています。「コーチングと医療」、「コーチングとホテル」など、さまざまな掛け合わせで、協働的な人間関係をベースにしたコミュニケーションと目的の実現に向けたサポートができると思います。
本当は「コーチング」という言葉がなくなるぐらい、人とのコミュニケーションのなかでコーチング的な
関わりが当たり前になればいいなぁと思っているんです。誰もが周りの人の成長を喜び、そのために協働的に関わりあう世界。素敵だと思いませんか?そういった意味で、仕事でもプライベートも常に協働的であることを体現していきたいと思います。
長期的な夢としては、パーマカルチャー・農業・中国医学などに魅かれる自分がいるので、それを大切にしたいなと思います。あと、20年後くらいのイメージとして、和服を着て平屋の日本家屋に住む自分が浮かびます。日本の良さを大切にしている自分がな
ぜか目に浮かぶんです。
普段ですか?今はとりあえずドラクエに夢中です(笑)。昔から大好きなんです。ドラクエをやると、普段自分が立てていないアンテナが立つっていう感覚が嬉しいですね。やっていて楽しくてたまらないっていう感じがあります。真面目な話をしてきましたが、本当は息を吸っていてもはいていても大笑いしていたい、そんな人間です。(笑)
●起業しようと考えている方々へのコーチングの導入へのアドバイス
・何か決断をしなければいけないような場面では、コーチはたくさんの選択肢の中から、あるべき選択ではなく、その人が一番力を発揮できる選択肢を一緒に探し、選択し、行動につなげるお手伝いをします。
・ 自分の存在や事業について自信がもてないような場面では、コーチはその人らしい価値観を見直す作業をします。ミッションが見えると、腹に落ちるというような、身体的な深い納得感が得られます。
■渡邊有貴さんにコーチを受けたいとき●時間的・予算的な相談は、とりあえずメールにて。
●コーチングを無料で体験できるサンプルセッションを行います。
●その後、合わないなと感じた場合にも気軽に言っていただければ渡邊さんの
ネットワークで別のコーチの方を紹介してくださるそうです。
■インタビュー後
現在、さまざまな人がコーチという名刺を持っているなかで、実際にコーチングを受けたいと思っても、どのように探せばいいのか迷う方も多いでしょう。また、興味はあるけれど、実際に受けてみるには敷居が高く感じている人も多いでしょう。私もコーチングには大変興味があって本もたくさん読んでいましたが、彼女の話を聞いて、改めて目からうろこの瞬間がたくさんありました。コーチングがとても東洋的なものであるという話には同感。自然体で、柔らかくて、だけど知的で。コーチとしてはもちろん、それ以外でも長く付き合って行きたいと誰にでも思わせる、魅力的な女性でした。